雪国の黙示録  

       Ⅰ

越後から三田の丘へ上った詩人の妖術は
アマリリスではなく水仙の園で拾ったものだ
魚沼の蔵で眠り
蓮の茎の横笛が誘う雪国の黙示録
何も知らない村人はその旋律に額を捧げる
雪割草に宿るヒヨドリの肺の温みを夢見て

       Ⅱ

生え初めるクレソンの苦悩
沢の白い水に羞じらう女神の鎖骨に宿る
背徳の言葉たち
「そもそもの始まりは炎の揺めき。
信託から解き放たれるための祈り。」

       Ⅲ

記憶がなかった頃の昔
虎魚の醜さに苦笑した山の神
やがて川を下り千谷の里に
豊穣な稲をもたらすフォークロア
倒れかかる八海の壁に木霊する恍惚に導かれ
詩人は幻影を胸の銅版に刻む
蓴菜の葉脈を数えながら……

 ソネット

ラジオのノイズの向こうに雨が降っている
区切られた音の間にあの頃の匂い
爽やかな悲しみは青く底光りして
老いた額に語りかける

茶色い駅舎に砕けた火花
明日を問うこともなく 
野火止の水は走る
僕らの悔いを携えて

白い肩の娘の息遣い
クヌギの林に踏み迷うスニーカー
三宝寺池の鴨の嘴が射ぬく漆黒の瞳

もう眠らねばならない
逝いた友の微笑みに
一輪のヒメジオンを手向けながら