アーカイブス(作品)

モーターガレージ(執筆者:久納美輝)

駐車場を一面パンダの埋め尽くす社用車としてあるプロボックス

Suchmos(サチモス)をBGMにひた走るヴェゼルは霧の首都高速を

ウユニ湖の水面と水面の虚の空の境を走るランクル70

ガムテームだらけでほのかに汗臭きビニールシートの祖父のヴィヴィオは

ハスラーとランクル掛けしごと派手なカラーでゴツいFJクルーザー

社用車を他社と比ぶ御社はアルト弊社はアクアやや嫉妬せり

パジェロとう無骨な名とは裏腹にクラシカルなるフライングパグ

排気量0.66悪路ゆく軽だが岩場を登れるジムニー

軽なのにスポーツカーのS660(エスロク)は軽なのに価格200万超ゆ

オフィスにて(執筆者:久納美輝)

オフィス

机(き)の上に小型の醤油ボトル置く 退職代わりに自決せむため

左手でちぎりて落つる髪の毛を床に払いて仕事を始む

同僚のミスを見つけて報告す上司の見らるる全体チャットに

隙あらばマウントを取る癖隠し後輩指導すチャットは難し

洗濯をせぬ服を来てスメハラの議題のあがる会議に参加す

アイコンを自画像に変え反応のなければハンコの画像に変える

菓子ばかり食う社員とぞ後ろ指刺されつつ柿ピー5袋目開く

隣席の人がティッシュに菓子を出し吾は手を伸ばし吾のものとせむ

昼休みのココイチ5辛の肛門のいぼ痔に障り午後半休す

二缶目のコーラ飲むとき隣人に名を呼ばれればゲップで答う

機械仕掛けのたばこ人形(執筆者:久納美輝)

一時間経つと葉巻に火を付けてぷかぷかと吸うたばこ人形

表情はきれいきたないかわいいの3Kを混ぜたグレーの夜人形は

ぷすぷすと焔が消えて床板の跳ね上がり出る煙りたがりさん

十字架に架けられてなお大麻吸う人形の目にある五寸釘

首を断つペーパーナイフが水平に動きて馬から落ちる騎士(ナイト)は

隙間からぶどう酒もれて白ひげのひげを濡らして赤く染めゆく

銀の皿からあふれゆく血をうけてカップの白湯は赤く染まりき

「さんざしは笑っていない」腐葉土にアイスの木挿しラットの墓標

二週間洗っていない洗い場をうねうねと這うハエの子供は

ハエの舞う部屋に積まれし人形の丘に日々寝るハエの王様

後背(執筆者:久納美輝)

自らをクズとは言うな目の前に詠草あらばみなわれの友

惚れやすく会う人すべてを好きになる主婦に言いけり結社は任せろ

自己不全感があるから愛せるぜ君も君の愛しし俺も

なめらかなテーブルクロスにぽつぽつとあるソースこそ吾は描くべし

文学はなべて許容す見せてみよジャン・ジュネ超える認知のゆがみを

会社員、主婦、フリーターなどさまざまな後背のたりと集まる歌会

九官鳥一匹飼いて失言をするたび肩をつついて欲しかり

後背の理解に費やしいい歌か問われれば吾は言葉をうしなう

後背をすこんと抜けば人類も浴槽に浮く垢とおもえり

マイノリティマジョリティとの区別せず吾は受け入れる他者のすべてを

煙草を恨む(執筆者:久納美輝)

夜もすがらタバコ吸いたり新しき歌詠めぬまま四時を迎える

体によくストレスさえも殺すとぞ聞けば贖(あがな)う電子タバコを

副作用なき煙草など幻想と咳やまざれば我が身に覚える

躁鬱や不眠に効くとうCBDなる合法の大麻を試す

ふかぶかと吸い込む後に咳と涙止まらず大麻は吸わぬと決める

死神の鎖鎌にてわが喉を断ちたし喉に痰がたまりぬ

うつろなる瞳を閉じて眠らむと机(き)に伏せたれば一首が浮かぶ

怠惰から勤勉に至る賽を振る博徒のごとく今日も歌詠む

換気扇回し続けてハエたちの湧くことのなくはつかにさびし

カビのわくザル放置して二週間点から面になることはなし

ミドル・ヴァース(執筆者:久納美輝)

学ぶこと拒むる繭を突き破り翼竜としてわれ飛び立てり

雨流すアスファルト踏み足跡(そくせき)の残らぬ都市の影として生く

往年の若々しさを恨みつつメンズ・ビオレで顔を洗えり

ぐい呑みで養命酒呑む何回も読むには重いヘビー・ヴァースは

ヤミ市のカストリ酒を呑むがごとライト・ヴァースをおそれつつ読む

躁鬱や食欲不振に効く歌をミドル・ヴァースと名付けて愛す

われにのみ効く薬らし人様に歌ほどこせば苦情の嵐

一本の便のとぐろを巻く日には下痢の日よりも韻律のよし

すこしずつ暮らし楽しみ詠む歌を残す日々こそわがクラッシク

自らを乳房にかえて墓碑となすふみ子の裸身にわが手を添えたし

スロー・ラナー(執筆者:久納美輝)

就活の作り笑顔をアイコンにすればサイコなやつと言われり

クノくんといつも呼ばれるウが大事クノウはウだよ何度でも言う

アンニュイな表情をする歌人に笑えとつぶやきブラウザを閉ず

YouTubeを開きたくありひねもすをネットに過ごすWeb編集者

目のクマの激しくコンシーラーを塗り死に顔のごと顔で出社す

意図を汲みかたちにするのがクリエイターでは、歌人とはなにものなのか

ひとに仕事振らないわれに下されるめんどくさがり屋という評価

ディレクターなる職位ゆえ顔色を伺い仕事を振らねばならぬ

個性とはあってないもの自意識のつよき人らの通知をオフする

僕はいま頑張ってるときみに言うためだけに詠む毎日十首

梅雨を歩けば(執筆者:久納美輝)

鼻先と股ぐらとあと太腿をあまねく赤く染めゆく炎(ほむら)

考える葦に油のしらじらと凝りてバッテン付けて採取す

傀儡子は傀儡人とは名乗らざり現代短歌作家と名乗らむ

躁鬱の景をあらわす赤と黒わが目に刺さる『ティーバッグの雨』

酔うために吾の呑む赤きぶどう酒を孝男は渋みぞうましと呑みけり

語るとき目尻の下がりモゴモゴと言葉を探す大学教授は

時事ばかり詠むようになり彼の視し銀河は過去にけぶりつつある

普遍的美学と俗を愛す吾のこころはリンクせずすれ違う

詠草に不幸匂えばその生を認めてその語と吾は向き合わず

傘ささず梅雨を歩けば髪濡らす雨粒すべてをエスプリと呼ぶ

モンキー・ライフ2(執筆者:久納美輝)

少数派ぶりたしグレート・ブリテンの国旗掲げしMINI乗り回し

一身にギャルズ・ウィンクを受けて立つガルウィングからゆっくり降りて

鶏頭をたやすく手折る吾も君も 頸動脈を断てば屍

身を捨つる結社はあれど大義なし総括もなくただ老い痴れるのみ

大義さえあらば他人を殴らむとおもいつつ待つ信号機赤

君といるシンクロニシティともに歌詠みて認知のゆがみを正せり

一日に二本と決めて三本目のモンスター購うカフェイン中毒

恋愛も嗜癖のひとつ人と会う時間を恐れて部屋にこもりぬ

糖質オフの味わいのなきビール飲む 酩酊すらももうめんどくさい

十首出し次の十首の締め切りを恐れて過ごす囚人として

モンキー・ライフ(執筆者:久納美輝)

この都市も地中か蟻の巣のなかに水銀流すごと夏の雨

桜桃忌水面(みなも)を歩き君に問う子供だらけのいまをどう書く

飲めば飲むほど弱くなる金麦の缶積み上げるドランク・モンキー

墓場にて日本酒を飲む猿たちの動画をつまみにわれも酒飲む

血痰を道に吐きつつ煙草喫むI’m OK You’re not OK

パブロンを嚥む口実に風邪をひく妙に頭(ず)の冴え十首ひらめく

弱者とはイワシの定義に似ていると奥歯の煮干しをにれ噛みもどす

十二時を日毎知らせる鳩時計わが瑕疵がまた人づてにくる

わが瑕疵をその場で正す語彙力を持たぬ人らも歌を詠むらし

尊敬の二文字がなく会う人を等しく進んだ猿とおもえり