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都構想否決:地方自治改革は停滞へ(執筆者:川岸 直貴)

2020年11月1日、大阪で二度目の都構想の住民投票があり、そして否決された。

都構想の住民投票は、日本の今後の10年20年先の政治を占うとても重要な住民投票であった。否決され、事実上、維新は政治組織としてのレーゾン・デートルを失ったにひとしい。

愛知県民としては、日ごろから愛知県知事と名古屋市長の対立を目の当たりにしており、維新が立てた地方自治体への問題意識には理解をしていた。

直近の地元政策では、愛知県国際展示場(中部国際空港)と名古屋市国際展示場(金城ふ頭)の問題があり、県と市が互いの立場を譲らなかったことで、愛知県にはふたつの中途半端な大きさの展示場が生まれてしまった。県民としては大規模な公共政策に正しく県民の意見が反映されているのか、率直な不安を覚える。また、こういった統一感のない成長戦略が、地域経済に悪影響をもたらすことは容易に想像できるだろう。

このような表面的な問題もあるが、現在の地方自治のあり方には、さまざまな潜在的な問題も存在している。少子化・高齢化社会のなかで、都市部と山間部では一票の格差が生まれ、地域ごとの議員数にも大きな差が生まれてしまっている。このひずみは、現在の「県」という枠組みでは、いずれは適切な民主主義を成すことができないという大きな問題を私たちに突き付けている。

どのようなかたちが、より良い民主主義を実現できるのか、今後もこれは大きなテーマであり続けるのは変わりがない。ゆえに、なぜ都構想が否決をされたのかを考えることは、今後の地方自治の改革が進むべき道を解き明かすヒントになるはずだ。

今回の大阪都構想・住民投票の出口調査では、前回2015年時に賛成に投じたひとの9割が今回も賛成に投じ、反対に投じたひとの9割が今回も反対に投じていると出ている。つまり、相当まったぷたつに大阪市民の意見は割れており、揺るがなかった岩盤票というのが浮かび上がる。

逆にいえば、維新は投票世代の新陳代謝が起きていない段階で住民投票に打って出たこと、そして反対層への政策理解の浸透を得られなかったことが、敗因に繋がっていると分析できる。

思うに、維新の政治スタイルは性急すぎるきらいがある。地方自治の議論は、地域住民の意思・意見が最も重要であり、より一層丁寧な議論が求められている。今回の都構想の「特別区設置協定書」の中身は、維新と公明党の政治家内の議論で作り上げられており、協定書の中身が市民にまで降りていなかったのではないだろうか。ゆえに、住民投票は短期間での単なる印象勝負になってしまい、政策がブラッシュアップされるべき時間が足りていなかった。都構想にはもっと良くなる余地があることは、今回のさまざまな議論のなかでも分かってきている。

維新の求心力低下と国政への影響は必至だが、否決されたとはいえ、70万票近い多くの大阪市民の民主主義を受け止める受け皿として、今後も活動していく政治的な使命があると私は考える。

いまは、大変な意義のある住民投票を行った大阪市民に感謝をしたい。そして、この結果を受け止めて、より良い民主主義とは何かを考える契機としたい。

短歌10首 蟹のごとくに(執筆者:久納美輝)

テーブルと介護ベッドの狭き間をいちはやく過ぐ蟹のごとくに

絶え間なく水は流れて祖母の手に拭はぬ疫病の神あまたをり

ふとももとふとももの間の嵌張の灰皿にカンと雨だれが落つ

居間の祖母を離るやうに母は子供部屋、祖父は二階に子は外にゆく

左から右に流るる風を見る闇夜の屋根に雲隠るまで

曇天の夜空に光るほの明き星にあなたの頬おもひ出す

街頭の明かりに読まば文庫本ひかりを映し羽虫らが群る

天井の木目を祖母はじつと見る群青の空をゆかしむやうに

くさむらに身を横たへて口に入る索子を噛まば甘みを感ず