中城ふみ子 短歌解説その79(執筆者:田村ふみ乃)

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ゆつくりと膝を折りて倒れたる遊びの如き終末も見え 

1954年6月「短歌研究」

死ぬってどんな感じなのだろう。この歌には、役者であるふみ子と、もう一人演出家でもあるふみ子がいて、声にならない声をあげ、膝(ひざ)を折り曲げてベッドの上に様々なポーズで倒れこんでみる彼女の姿を思い浮かべる。

まるで公演間近のお芝居の稽古をしているかのようだが、まさにこれは、刻々と迫る「死」の舞台の幕が上がる直前なのである。

「遊びの如き終末」と、自分の最期を遊びのようなものだというが、人生なんて所詮、お遊びに過ぎないのだからといって、自身を慰める気持ちもあるのかもしれない。

出だしの「ゆつくりと」の語意に合わせて、焦らずに結句まで言葉が運ばれている。句と句のあいだには沈黙があり、そこに本当は諦めきれない生への叫びを聴かせる。

そして彼女の鋭い自己凝視は、「死」への道程(みちのり)を悲劇的に強調するのではなく、「遊びの如き」で自虐性を出し、面白味をそえる。

「生」の最大のテーマともいえる「死」をどううたったらよいか。そこに挑戦する姿勢が歌に表れており、意欲作のひとつだ。

はたして格好良い死に様なんてあるのだろうか。ふみ子は「死」を生きる目的として、ど真ん中に見据え、その日が来るのを楽しいイベントを待つかのように詠み続けた。

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