
植ゑ込みに暇人四人(よたり)が凭れるをカフェゆ眺めて指先に撃つ
青々とまつすぐ立てりひと日ごとにたましひを焚く蝉の鳴く木は
五月雨の夜に大きく手を広げ「もう死ぬわ」つて蛙が死せり
コロナ禍に大雨も降り短冊の重みに笹はしなつてしなつて
急行を俺が俺がと急ぎ合ふ誰も俺らのゆくへ知らずも
君の手を握らば糸を引きさうな両手をズボンにしまつて歩く
窓を打つ雨音聴きてさらさらと砂糖をそそぐ感じに眠らむ
バニラの香漂ふ古書を夜ひらくこそばゆき鼻の頭を掻きつつ
長雨の紫陽花の花序のきみどりを広野とおもふ蟻の駆ければ
うつしみの柔きわが身を湖に写さば腐(くた)してゆくゆふまぐれ