カマキリの自殺についてご存じだろうか。これは最近の研究で明らかになりつつあることなのだが、カマキリが食べたかげろうなどに寄生していた虫が、カマキリを入水させて、殺してしまう。
昔カマキリを殺すと体の中から針金のような虫が出てきて、これはいったい何だろうと思った人は多いだろう。これはハリガネムシといって、カマキリに寄生している。
ハリガネムシは水中で生まれる。その小さな虫が、カゲロウなどの幼虫に食べられ、それを陸上で食べたカマキリの腸の中で大きく成長する。
驚くべきことに、成長したハリガネムシが、泳げないカマキリを誘導して、川に向かわせるのである。最近の研究では、川の輝きをみたカマキリが、そちらに吸い寄せられていき、自殺してしまう。そして、死んだカマキリの体外にでたハリガネムシは水の中で卵を産み、子孫を増やすというわけである。
ここからが本題なのであるが、われわれ人間も腸内細菌によって操られている。そんなことを思うことが多い。
栄養学などでは、腸内環境の改善とか、腸内フローラなどということを言うが、腸の中にお花畑をもつことが重要なことのようだ。そうした腸内細菌が人間の感情に影響を与え、人間を支配するのである。
腸内環境の良い人は平穏な感情でいられるのであるが、腸内環境が悪くなると人間の振る舞いは粗暴になり、先ほどのハリガネムシに操られたカマキリのように暴挙に出てしまうのである。
発酵食品などが体によいといわれるが、そうしたことが、体にどのような効果をもたらすのか、実際のところ突き詰められているわけではない。もちろん、発酵食品以外にも、腸内環境をよくする食べ物はあるはずである。また、過度のストレスなども腸内環境に大きく響いていく。
ハリガネムシの例から類推できるのは、こうした腸内の改善が、精神の改善となり、我々をさまざまに高めたり、貶めたりするということを知っておくだけでも、日常が違ってくるのではないかと思うのである。